道新ぶんぶん号による号外の発行
  新聞技術2006年6月号(日本新聞協会発行)
 
北海道新聞社 経営企画室 井村 浩也

1.はじめに
写真1 道新ぶんぶん号
写真1 道新ぶんぶん号
 北海道新聞社の多目的取材・宣伝車 「道新ぶんぶん号」(写真1。以下、ぶんぶん号)は(1)編集号外(編集局が主体となるニュース号外。以下、号外)の発行(2)NIE支援(3)主催事業の宣伝やイベント新聞の発行(4)被災地での取材指揮や生活情報の発行―という4つの目的をもって2004年8月に誕生した。29人乗りの小型バスを改造し、カラープリンター、モノクロ印刷機、自家発電機を装備し、電気のない現場でも一定期間、自立行動できるようにした。これまで災害報道やサッカーW杯号外の発行などを通じて得た、さまざまな教訓やアイデアを1台の車に詰め込み、作業の信頼度を高める「二重化」と、経費を抑える「汎用性」の2つが大きなコンセプトとなった。
 04年10月に発生した新潟県中越地震では、新潟日報社の要請を受け被災地に出動した。その後、他紙の視察や照会が相次ぎ、5月現在で「ぶんぶん型」車両は、当社を除く5社に計6台導入され、今後も誕生が見込まれている。
 新聞休刊日に行われた市長選挙では、開票所前に出動し、選挙結果をいち早く号外として発行した。他紙購読を含む全戸に未明のうちに配布し、高い評価をいただいた。北海道出身選手が多数出場したトリノ冬季五輪でも、ジャンプ、カーリングなどの地元応援会場を回り、選手の活躍や応援会場の盛り上がりを伝えた。
 ぶんぶん号外は、最大でもA3判表裏の簡易なものだが、経費や価値判断から時に見送らざるを得なかった輪転機号外を補完し、地域に密着した新たな読者サービスの手段を創出したと自負する。

2.これまでに発行した号外
写真2 北広島市長選挙の号外紙面
写真2 北広島市長選挙の号外紙面
写真3 バーサーロペット・ジャパン号外1面
写真3 バーサーロペット・ジャパン号外1面
写真4 トリノ五輪スキージャンプ号外1面
写真4 トリノ五輪スキージャンプ号外1面
 ぶんぶん号は、通算56回出動し、内訳は号外発行17回、NIE支援13回、イベント新聞発行25回、被災地支援1回となっている(4月末現在)。特徴的な事例を紹介する。

(1)北広島市長選挙
 05年7月10日の新聞休刊日に行われた北広島市長選挙では、開票所となった総合体育館前に駐車し、11日午前零時すぎの確定票発表とほぼ同時に車内で印刷を開始した。開票所前で待機する各陣営支持者に配布するとともに、4販売所が連携して全戸配布するA3判1ページのモノクロ号外(写真2)2万4000部を2時間半で刷りあげ、午前3時までに販売所に引き渡した。コンビニなどの張り出し用カラー号外も500部製作した。現地の取材・出稿、整理は編集局札幌圏部の北広島担当記者2人、組み版・印刷は情報技術局編制部員2人、販売所との連絡調整は販売局員1人が当たった。雨もようだったが、車体横に取り付けたサイドオーニング(ロール式ひさし)を広げ、販売所の車を横付けすることで、号外をぬらすことなく搬出できた。

(2)バーサーロペット・ジャパン2005
 05年3月20日、旭川市内で開催された国内最大規模のクロスカントリースキー大会「バーサーロペット・ジャパン」の会場では、A3判2ページのカラー号外(写真3)を2000部製作し、参加者や大会関係者に配布した。印刷中に福岡県西方沖地震のニュースが飛び込み、急きょ1面に「福岡、佐賀で震度6弱」
のカットを差し込み、まさに「号外の号外」となった。

(3)トリノ冬季五輪号外
 06年2月21日、トリノ冬季五輪スキージャンプ団体では、4選手のうち3選手が旭川に近い下川町出身で、下川町総合福祉会館には深夜にもかかわらず大勢の町民が集まった。担当する名寄支局員は、応援会場の写真や原稿を本社に送信。本社の編制部員は、編集局編集本部員との相対組み版で組んだ紙面データをぶんぶん号に返信した。A3判2ページのカラ
ー号外(写真4)1200部の印刷を競技終了の約10分後から開始し、刷り上がりと同時に会場で配布し、コンビニにも配置した。





3.ぶんぶん号の仕様
 ぶんぶん号に新しい技術はない。汎用品を組み合わせ、安価に仕上げる工夫をした(経費は月額リース料約20万円の5年契約)。自家発電機を除く車内すべての機器を二重化し、万一の故障に備えている。

(1)車両
 雪道でも安全に走行できる四輪駆動の三菱ふそうローザ(29人乗り)を改造して定員6人とした。長さ6.99m、幅2.03m、高さ2.68m、総重量5090kg。定員10人以下、車両総重量8t未満の条件を満たし、普通免許で運転できる。

(2)自家発電機
 ホンダの車載専用発電機EV6010を1台搭載。定格出力は50Hz 100V-5KVA。車内から始動、停止ができ、燃料が満タンの20リットルで連続16時間稼働する。NIE出前講座などで学校に出向いた際、子供たちが排ガスを吸い込まないように右後方屋根部より排気。発電機が使用できない札幌ドームなどでは、外部コンセントから車内に電源供給できる。

(3)カラープリンター
 リコーのIPSiO CX9000Mを2台搭載。A4判を最大で毎時2000部、A3判両面なら毎時500部印刷できる。少部数で時間に余裕があるときは、品質の良いカラープリンターを使用する。冬期間は結露による故障を避けるため、使用前に2時間以上車内を暖めなければならない寒冷地特有の悩みがある。

(4)モノクロ印刷機
 デュプロのDP-440eを2台搭載。A3判を最大で毎時12,000部印刷できる。数万部単位の号外発行では、モノクロ印刷機を使用する。冬期間は結露対策のほかに、インクが氷点下で分離するため、使用しないときはドラムごと取り外して屋内に保管している。

(5)通信機器
 auのCDMA 1X WIN対応データカードW01K(受信最大2.4Mbps)、NTTドコモのPCカード型FOMA F2402(最大384kbps)各1台を常備し、現地の通信状況に合わせて選択する。両社の無料プロバイダーサービスを使用してインターネットに接続、当社が構築した「災害Webサーバー」(注1)を活用し、号外用の記事、写真、紙面データなどを送受信する。
 基地局などの通信設備が損壊し通信カードが使用できない場合は、可搬型衛星通信端末インマルサットM4(64kbps)の使用を想定している。

(6)組み版ソフト
 データの互換性を重視した結果、組み版に専用ソフトを使わず、多くのWindowsパソコンが搭載するマイクロソフト社のワードを使用している。テキストボックスの基本操作を覚えれば、本・支社、支局、販売所、および学校でもひな型をもとに組み版でき、プリンターで簡単に号外発行できる。06年2月の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」では、夕張支局が速報号外を発行。支局長が自ら組み版し、取材から印刷まで一人で行った。NIE活動で学校を訪問した際も、製作した紙面の文書ファイルを学校に提供し、その後の授業に役立ててもらっている。

4.発行体制
 ぶんぶん号による号外発行の決定は、輪転機号外と同様に本・支社の報道部が行うが、出前講座やイベント新聞などの予定がある場合は、必ずしも号外発行を最優先とせず、日程調整を図る。出動を楽しみにしてくれる読者の期待に極力応えたいからだ。
 発行要員は編集作業に1−2人、組み版・印刷に2人、車両運転に1人が基本構成となる。

写真5 車内で美唄市長選挙号外を製作する報道部員と編制部員
写真5 車内で美唄市長選挙号外を製作する報道部員と編制部員
(1)編集作業
 原稿は、当該地域担当の支社・支局記者が出稿する。整理作業(レイアウト・見出し作成)は、現地組み版と本社組み版で担当部署が異なる。前者は支社・支局の記者が担当し、現地入りしたぶんぶん号内で作業する(写真5)。後者は本社編集本部員(整理記者)が本社で整理作業を行う。

(2)組み版・印刷
 組み版・印刷要員として、本社編制部員2人が同行する。現地組み版の場合は、予定稿をもとに粗々のレイアウトを事前に済ませておく。当日は、写真の色調整と配置、見出しと本文の一部差し替えなど約10分で組み版する。本社組み版の場合、ぶんぶん号に同行する2人のほかに、編制部員1人が編集本部員と本社内で相対組み版する。紙面データの送信開始から印刷開始まで1ページ当たり約3分で完了する。

(3)配布
 本・支社の販売局員が連絡調整し、当該地域の販売所が行う。

(4)その他
 総括管理と日程調整は経営企画室、機器管理は情報技術局編制部、運転と車両管理は総務局総務部車両担当が分担する。

5.最後に
 北海道新聞社は、朝夕刊合わせて地方版約70個面と本紙を、札幌2工場と旭川、函館、釧路、帯広の計6工場で印刷し、広大な北海道できめ細かな情報を、いち早く読者に提供することをめざしてきた。ぶんぶん号による号外発行は、この延長線上にある。機動性を生かし、新聞休刊日や地域限定の号外発行、出前講座、イベント新聞発行などを通じ、北海道新聞をより身近に感じてもらうことが、ぶんぶん号の目的といえる。
(いむら・ひろや)


(注1)札幌圏で阪神大震災級の災害が発生し、本社の紙面製作が不可能な場合を想定した応急・簡易的な多目的Webサーバー。(1)記事・写真の送稿(2)紙面イメージなどの送受信(在京友好社と支社間、支社・支社間など)(3)社員安否確認(4)社員連絡用掲示板−の4システムからなる。同時被災を避けるため、サーバーは東京にあるNTTコミュニケーションズ社のホスティングサービスを使用し、災害に強いとされるインターネットから接続する構成にした。

*「新聞技術」掲載原稿を一部手直ししました